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【U18】佐藤 洸一 監督インタビュー

2024年12月03日 New!

来春(2025年4月)始動するヴィアティン三重U18について、佐藤 洸一監督にインタビュー。

 

佐藤 洸一 / SATO Koichi
三重県四日市市出身。
1986年11月28日生まれ、184cm73kg。現役時代のポジションはFW。

四日市西高校から四日市大学へ進学し、その後FC岐阜に加入してJリーガーに。

2008~2012 FC岐阜 148試合(39)
※大学4年時にFC岐阜の特別指定選手に登録され、初出場・初得点を記録。
2013~2016 V・ファーレン長崎 129試合(31)
2017~2018 ツエーゲン金沢 72試合(19)
2019 ヴァンフォーレ甲府 19試合(4)

*J2通算 368試合93得点
()内は得点数

その後、ヴィアティン三重からのオファーを受け、地元三重県での活躍を誓い、2020年からヴィアティン三重で3年間プレー。22年に現役引退後は、大学での指導者経験も積み、25年からはヴィアティン三重U18の監督として指導をしていく。

そんな佐藤監督(インタビュー内では「洸一さん」)の選手としての数々のJリーグクラブでの豊富な経験や知識が、ヴィアティン三重U18でどのように活かされていくのか。また、どういった指導をしていくのかを聞いた。

 

ヴィアティン三重U18の指導で大切にしたいこと

 

サッカーと人間教育を分けて考える

 

まず、「ヴィアティン三重」クラブ全体として考えると、トップチームがJリーグを目指す上で下部組織・ユースチームは絶対に必要だと思いますが、U18が初年度に募集する人数は何人を想定していますか?

佐藤:18人~20人ぐらいを想定しています。フィールドプレーヤーが18人で、ゴールキーパーが2人です。最大で20人、最低でも15人は集まってくれるといいですね。現在10数名が入団希望という話を聞いています。(インタビュー時点)

 

監督に就任する洸一さんとしては、ヴィアティン三重のユースチームは、どういうチームにしていこうと考えていますか?

佐藤:まずはサッカーの部分、いわゆる技術や戦術に関して。そして人間教育・人間形成という部分を切り離して考えています。

トップチームがJFLからJリーグ入りを目指している中、最終的にはそこに選手を輩出することが目標です。1期生からいきなり輩出するのは難しいと思いますが、プレー以外のところでもトップチームでやっていけるだけのことを標準にしていきます。例えば、トレーニングに対する向き合い方であったり、トレーニングや試合に向けての準備の仕方であったり、いずれトップチームに選手を輩出することを想定したことを初年度から基準にして指導します。

それは最初からやっていかないと、あとから入ってきた選手は上級生を見て真似をして成長していくものなので、入ってくる選手の技術的なレベルに関係なく、ヴィアティン三重でやっていくのであれば、その基準をしっかり身につけてもらうように指導していきます。

 

競技者としても、ひとりの人間としても大切な部分ですね。

佐藤:もちろん入団してくる選手の技術があった上、入団してから技術面が成長した上での話ですが、その選手が将来的に大学へ進学したり、社会人になってからもプレーする可能性も踏まえて、Jリーグに行ったとしても恥ずかしくないような選手になって欲しい、オフザピッチのところも含めて身につけてもらいたいと考えています。

 

選手としてのレベルや中学時代に所属したカテゴリーに関わらず、いずれプロでも通用するレベルの”アスリート”としての心構えや振る舞い、行動を身につけられるというのは大きな特徴になりますね。

佐藤:そうですね、サッカーだけをやっていれば良いとは思わないですし、ユース年代の段階から将来のことも考えて学んでほしいと思っています。また、私が言うこともですし、先輩の背中を見て育っていくという環境づくりが大切だと考えていて、指導者が細かいことをあれこれ言う必要がない環境を作る。それが当たり前になっていくのがチームとしても強くなっていく、そういう集団にしていかないと個人も伸びていかないと思います。

成長途中のU15も東海の舞台で経験を積み始めている。

 

それは洸一さんがプロに進んでいく経験の中で、重要だと感じたわけですね。

佐藤:はい。現役引退後に大学生の指導をさせてもらいましたが、同様のことを伝えました。例えば、朝9時に練習が始まる時、15分前集合と決まっている中で、15〜16分前にやってきたとします。少し早く来ても、立って喋っていたり、座り込んで喋っていたり。全体のトレーニングは1時間半から長くても2時間半程度で、1年365日のうち1回のトレーニングが本当にそれで良いのか?全体練習に入る前の過ごし方としてそれで良いのか?そういったことは伝えました。

ただ、そんな選手たちがいても怒ったりはしません、そもそも何をやれば良いのかを知らない、そういう習慣になってしまっている場合もあります。

プロ選手だと遅くてもトレーニングの1時間前には来るわけです。早ければ2時間前とか、聞いた話だと日本代表経験があるJリーグのとある選手は練習の4時間前に来ていると。さすがにそこまでいくとチームスタッフもそこにあわせて準備をしなきゃいけないので大変だろうなと(笑)

 

洸一さんは、大学から当時J2のFC岐阜に進んだ時、そういう面での驚きや衝撃はありましたか?

佐藤:身体は大きい方で若かったので、いきなり練習に行って強いシュートを打てと言われたら打てるぐらい力はありました。最初は15〜20分前に行ってたんですが、少しずつ周りの先輩を見ながら、これじゃ駄目だなと思って早く行くようになりました。そこから年齢を重ねて、怪我をしたこともあったので、その予防も兼ねてトレーニング前にあれをして、これをしてと、ルーティンができてきました。ちょっとした毎日の積み重ねが1年間続いたら大きな差になっていくのだろうと感じました。

ケガに悩まされたが、地道なリハビリに取り組んでいた。

また、指導者が練習の中で教えることよりも、自分で考えて自主的に取り組むことの方がよっぽど身になるものだとも思っています。

習慣とか文化みたいなもの、オフザピッチの取り組みや振る舞いはチームの力にも比例すると思っています。あとは全国で優勝を狙うチームと1回戦で負けるチームでは、練習に対する取り組みも違います。そこに追いつき、追い越せとやっていくためには、オフザピッチのところを第一にやっていきたい。極端に言うと、これはサッカーが上手くなくても取り組めることですからね。

 

現役時代(2021年)

 

クラブチームの特徴

 

三重県の高校生年代は高体連が主流なわけですが、そういう環境の中でどういった部分がクラブチームの強みとして挙げられるのでしょうか?

佐藤:高校の部活は学校が終わってからすぐに練習ができることは良い点だと思います。ただ、学校の先生が指導をされていることが多いと思うので、先生不在で練習をしなくてはいけない、そういうこともあると思います。

クラブチームでは、常に指導者が見ている中でオーガナイズされたトレーニングができるので、これは大きなメリットのひとつだと思います。

また、強豪校になると部員数がものすごく多いです。1学年で60人〜70人いる学校もあると聞きます。しかし、クラブチームは約20人の選手を一人の指導者が見ることができるので、目が行き届くということだけでなく、指導がブレない。クラブチームの良い点だと思います。

 

ヴィアティン三重のトップチームがJリーグに上がり、県内の下部組織から選手たちが上がっていくという形が夢・目標ですね。

佐藤:そうですね。あと考えなければいけないのはサッカーは育成に重きを置くのか、勝ちにこだわるところに重きを置くのか。その点が難しいところだと思っています。徹底的に勝負にこだわるのであれば選手の判断を奪ってこちらがやることを指示したことを徹底させる方が勝ちに近いと思うのですが、その選手の判断を奪ってしまうと成長には繋がらないと思っています。

ですので、あくまでも育成に重きを置いて指導したいという気持ちがあります。実際の公式戦で選手たちはもちろん100%全力でやって、勝ちにこだわってくれたらいいのですが、指導する側は勝ちにこだわりすぎないように、選手たちの成長にも意識をしたいと思っています。

将来的にはユースからトップへ。

 

 

強化と育成のバランスを重視

 

例えば高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ(高校年代の最高峰リーグ)に所属しているような高校・クラブチーム中でも、育成と強化のバランスが良いチーム、特色としてそれが出せているチームというのはありますか?

佐藤:そのレベルだと、元々集まっている選手の質がかなり高いので、プレーのクオリティもオフザピッチの部分も一定レベルでやれているチームが多いんじゃないかと思います。

 

プレミアリーグを目指して頑張っている各地域・都道府県のチームからすると、当然上には行きたいはずで、勝ちにもこだわりたいはずですよね。

佐藤:そうですね、難しい部分です。やはり上のリーグ・カテゴリーにいないと、翌年に良い選手が集まりにくいでしょうし、4部からのスタートで勝ちより育成にこだわるとは言うものの、毎年一つずつカテゴリーは上がっていきたいです。ですので、綺麗事だけではなく、そこのバランスを取ることが大切だと思っています。ただ、どんな選手が集まってくれるのか、どれだけ成長できるか次第ですから、県1部に簡単に上がれるとは思いませんが、実現したいですね。

 

その中でも、常に”育成”を主語にして勝てるチームにしていきたいということですね。

佐藤:はい、そういう考えは指導する側がしっかりと持っておきたいですね。

 

中学生が高校生になるタイミングということで、中学生だと保護者と子どもが一緒になってどこに進むのかを考えるケースも多いと思います。

そうですね、中学生だとまだまだ保護者の意見も大きく反映されると思います。中には、本人に任せています、というご家庭もあるとは思いますが、多くは親御さんと相談する中で判断すると思いますし、クラブチームの場合、練習場所によっては送迎も必要になってきます。

 

スクール・U15からの一貫始動を目指していく。

 

 

環境の整備

 

三重県にはクラブチームがない分、成績が上がると注目されると思いますが、クラブチームだからこそ環境整備については現状どのように見ていますか?

佐藤:注目してくれると嬉しいですが、やはり強化するにはハード面の整備も必要ですね。練習環境で言うと、Jクラブのアカデミーだ人工芝の練習場があって、夜も使えるように照明が整備されていたり。

ただ、2025年の春には東員町スポーツ公園陸上競技場内の多目的グラウンドに照明設備が設置される予定です。また、2023年12月には津田学園様とスポーツを通じた地域活性化などの連携協定を締結しました。(①スポーツを通じた地域活性化 ②スポーツを通じた人材育成や交流 ③スポーツ振興や健康増進 ④練習会場の提供に伴う部活動の強化)それによって、津田学園様の施設もトレーニングの場として活用させて頂くことになる予定です。

将来的な話ですが、三重県内の実力がある選手、県トレに選ばれるような選手が三重県に留まってくれて、ヴィアティン三重に入りたいと言ってもらえるようにしていきたいのと、県外からも「ヴィアティンに行きたい!」となるようにしたいですね。

天然芝の東員町スポーツ公園 多目的グラウンド(照明工事前)

 

Jクラブだと寮もあるなど、かなり充実しています。

佐藤:そうですね、今すぐ必要な話ではないのでまだ先ですが、本当に強いクラブチームにしていくにはそういった環境面、ハード面、学校のところを含めて整えていく必要があります。そういう意味でもトップチームがどこのカテゴリーにいるのかというのも、下部組織にとっては見え方が変わってくるので重要だと思いますので、トップチームにはもっともっと頑張って上を目指していってもらいたいですね。

 

その後の進路について

 

選手たちの将来、進路については、考えていますか?

佐藤:はい、もちろんそれぞれの選手たちの相談には乗っていきます。大学の指導者さんとの繋がりもありますし、元Jリーガー、Jクラブとの繋がりもあるので、選手として続ける選手はもちろん、他の道に進むにしてもいろいろと相談には乗れると思います。

 

高校生の3年間を終えると、その先どんな道に進むのかを考える時期がやってきますね。

佐藤:その時期にも個人差がありますし、進みたい道もそれぞれですし、日頃から選手たちとはコミュニケーションを取りながら、進路に関する相談や悩みごとにも一緒に向き合っていきたいです。私自身の経験を元にしたアドバイスはもちろん、進学する場合でも次のカテゴリーを目指す場合でも、トレーナーや指導者など、他の道に進む場合でも、様々な相談に乗れる体制を築いていき、選手の未来・将来を一緒に考えていきたいと思います。

 

 

現在トップチーム所属の寺尾 憲祐選手はヴィアティン北勢FC出身(現:ヴィアティン三重U15)