NEWSヴィアティン・マニア / トップチーム
ラスト3秒のクオリティ。首位Honda FCに敗れる。
「山本監督。いよいよHonda戦ですが、どんな戦略で臨むんですか?」試合会場で準備が進む中で見かけた山本監督に声をかけた。「相手が上手いことは嫌というほどわかってますからね。パスを回されてポゼッションされることも想定内ですし…、焦らずにどれだけ耐えられるかが勝負だと思ってます。そしてその時がきたらどれだけスピードを持って相手ゴールに迫れるか。そんなことを考えながら朝から猪名部神社へ参ってきましたよ。」
秋のホーム4連戦の3つ目はいよいよ何度目かの瀬戸際、本当に負けられない、勝ちしか許されないJFL第29節。相手は昨年こそタイトルを逃したが今季も首位につける絶対王者Honda FC。
今シーズン最高と言っても過言ではない集中力と気迫を維持し続けた選手たち。終始相手がボールを保持する中、焦れることなく焦ることなく、チャンスを狙って何度も相手ゴールを脅かした。試合後の相手監督に「うちが負けてもおかしくない試合だった」と言わしめるほど、プラン通りに試合を進めていた。最後の3秒までは…。
サッカーは集中力を競う競技でもチャンスの回数を競う競技でもない。点を取って勝負を決める競技である。後半アディショナルタイムのラスト3秒。決してヴィアティン三重の選手たちの集中力が途切れたわけでも、気を抜いたわけでもないと思っている。絶対王者が最後の3秒にこの日最高のクオリティでパスを通し、最終ラインを破ってゴールを決めた。そしてヴィアティン三重は敗れた。
● ヴィアティン三重 0-1 Honda FC ○
前半:0-0・後半:0-1
- 90+5分:⑯川浪龍平・Honda FC
第23回 JFL第29節・スターティングメンバー
試合終了後・山本監督コメント
山本監督・試合総括:首位を走るHonda FCさんと対戦するということで、我々は意思統一をしてコンパクトにしながら相手のボールを奪ってカウンターをしかけ、そこから得点する。前半は失点ゼロでいけば相手の焦りも出てくるだろうと想定していました。そしてほぼプラン通りに試合を進めることはできていたのですが、後半については決定力…決めるべきところを決められなかった。反対にアディショナルタイムの最後の最後に考えられない形になり失点してしまった。結果を踏まえて総合的に受け止めるとHonda FCさんの方が我々より勝負強かった、一枚上手だった。試合の終わり方としてはもったいない、残念な終わり方だったと思います。
しかし選手たちは持てる力を出し切った90分でした。そして次のMIOびわこ滋賀戦をすぐに迎えます。厳しいスケジュールではありますが相手も同じ条件ですので、ホーム4連戦の4つ目でもありますので、応援してくださるみなさんに勝点3をお届けできるよう切り替えてやっていくしかないと選手たちにも話をしました。
インタビュアー:ギリギリのところで悔しい敗戦になりましたが、今日の試合で良かったところ、次に繋がるところはありましたか?
山本監督:今日は、これまでに積み上げてきたところと闘い方、戦略等について細かな意思統一をして臨んだところ上手くいった部分もあります。その一方で決めなければいけない、1点でも相手より多いほうが勝つという原点にもう一度立ち戻らないと、惜しかったとか、もう少しだった、という試合を無駄にしないように次の試合を闘いたいと思います。
VTM:首位のHondaさんを相手に、イメージ通り、準備していたとおりであろう試合運びを見せた中で、ラスト3秒で試合を落としてしまいました。この試合で一番難しかったところはどこでしょうか?
山本監督:やはり高いポゼッションのサッカーをしてくるHondaさんですので、我々がディフェンスにまわる時間が長かった。相手が優位に試合を進めながらもそれに対して我慢強くやれたこと、それは収穫だったと感じています。ただ、奪ったボールを簡単に繋げられない時間があった、推進力が途切れてしまう。そこは体力的なところもありますが、そこを打開する工夫、事前準備、アイデアなど「トライする勇気」のようなものがもう少し高ければ良かったのではないかと感じています。
Honda FC・安部監督試合後コメント
Honda FC・安部監督:最後、90+5分のところで決勝点がたまたま入ったわけですが、今日はヴィアティンさんの闘いが非常に素晴らしかったので、正直なところ逆の結果になっていてもおかしくなかったと思います。相手の方がボールへの執着心も上回っていましたし、スピードのある攻撃も脅威でしたので、最後の最後にたまたま入りましたけれども非常に厳しい試合だったと感じています。
インタビュアー:特にヴィアティン三重で気になった選手の印象などありましたら教えて下さい。
安部監督:2トップの⑤菅野選手、⑨酒井選手は早い時間に交代してしまいましたが、あの2人で攻撃ができる点。そこに加えて⑦塩谷選手の個の能力、今日に関して言うとボランチの選手を少し入れ替えて来たと思うのですが、11番(早坂選手)16番(橋本選手)のさばきのリズム、テンポがすごく良かったので、うちが後手を踏んでしまう場面が多く脅威に感じました。
前半・終始相手がボールを保持するが、わずかな隙を突いて決定機を作る
コイントスで風下を選択したHonda FC、ヴィアティン三重が風上に立ちキックオフ。Honda FCはコンパクトな陣形で強風を考慮してグラウンダーの短いパスを繋いでビルドアップ。今日のヴィアティン三重は前線からの強烈なプレスは控えめ、やや引いて守る。想定通りHonda FCがボールを奪われることなくパスを繋ぐがゴール前まで運ぶことはできない。中盤で引っ掛けてボールを奪ったヴィアティン三重、スピードを上げて相手陣地にボールを運ぶ。⑨酒井達磨と⑤菅野が連携して相手ゴールに迫る。前半10分、両チーム最初のシュートはヴィアティン三重、⑤菅野のシュートはわずかに枠の外。
その後も同じような展開が続くが決定的なピンチはない。19分、久しぶりのスタメンに入った⑰野垣内が左サイドからクロスを放り込む。それを⑨酒井がダイレクトボレー。強いシュートを放ったがこれも枠の外。前半は相手のシュートを2本に抑え、スコアレスのまま後半へ。
2021JFL第29節vsHonda FC ハイライト📹
先制ゴールを奪いたいヴィアティンは前半19分🕛こぼれ球を拾った早坂が野垣内に繋ぐと、軟らかいクロスに合わせたのは酒井‼️豪快な左足でのボレーシュートだったが枠を捉えられず💦#酒井達磨#ヴィアティン三重#ハイライト pic.twitter.com/wmyCBmghfN— ヴィアティン三重 【公式】 (@Veertien_TSC) November 3, 2021
後半・決定機に決めきれず…、最後まで闘うもラスト3秒で失点。
後半に入り今度はHonda FCが風上に立つ。Honda FCは人数が多いのではないかと感じさせるほどコンパクトな距離感を保ちながらじわじわとヴィアティン三重を崩しにかかる。しかしヴィアティン三重の選手たちは焦ることなく前半のイメージを維持しながら耐え続ける。そしてボールを奪ったところで一気にトップギアで持ち上がるが相手の寄せが速く、パスを繋ぐ事はできず2〜3本繋いだところで奪い返される。
50分、再びチャレンジしてボールを奪い、今度は⑤菅野がドリブルで運び㉘寺下にラストパス、シュートを放つが枠の外。前半途中、傷んだ⑨酒井に代わって入った㉘寺下が積極的に狙うが決められない。
2021JFL第29節vsHonda FC ハイライト📹
前半をスコアレスで折り返し、迎えた後半10分🕛野垣内がクリアしたボールを拾った菅野は相手のディフェンスを振り切って駆け上がる✨最後はパスを受けた寺下がダイレクトで強烈なシュートを放つもわずかにゴールの外💧#寺下裕貴#ヴィアティン三重 pic.twitter.com/9UqrxXT1cf— ヴィアティン三重 【公式】 (@Veertien_TSC) November 3, 2021
一方、相手の攻撃は短いパスでじわじわ攻め込まれ、ゴール前で横に繋いでシュートコースが開いたタイミングでシュートを狙ってくる。何本か同様の形から狙われるもディフェンス陣の身体を張った守備と㉑加藤大喜が集中力で弾き返す。
2021JFL第29節vsHonda FC ハイライト📹
Hondaにボールをキープされ苦しい時間が増えてきた後半21分🕛空中で競り合った後にシュートを打たれる💥GKの手前でバウンドするセーブしづらいシュートだったが、加藤がしっかりと弾いてチームを救う🤩🌟#加藤大喜#ヴィアティン三重#ハイライト pic.twitter.com/Z9a5Q9bjSp— ヴィアティン三重 【公式】 (@Veertien_TSC) November 3, 2021
前半に比べて危ない場面が増えたが、完全に崩される場面はほとんどなく、じわじわと押し込まれるが今シーズン最高と言っても良い集中力と気迫で決定機を作らせない。そして奪った後はスピードを上げて攻め上がる。ただひたすらそれにチャレンジする。
そして迎えた89分、この試合最大のチャンスが訪れる。自陣でボールを奪った㉜井上丈が前方へパス、最終ラインから2人追い越して上がってきていた㉝奥村の前にあるスペースに㉘寺下がボールを送る。73分に交代で入ったばかりのフレッシュな㉝奥村、全速力でドリブルし相手DFを置き去る。右サイドから駆け上がる⑦塩谷は完全にフリー、㉝奥村からのパスを受けた⑦塩谷がダイレクトでシュート!しかし身体が流れたのかサイドネット、最大の決定機にフリーでのシュートを外してしまう。
2021JFL第29節vsHonda FC ハイライト📹
試合も残りわずかとなった後半44分🕛自陣で井上がパスカットすると素早くパスを回してカウンター👊途中出場の奥村が前線へ駆け上がりフリーの塩谷へパス🌈塩谷のシュートは惜しくもサイドネットでこの試合最大の好機を生かせず🦁💦#塩谷仁#ヴィアティン三重 pic.twitter.com/GqrOnOarVu— ヴィアティン三重 【公式】 (@Veertien_TSC) November 3, 2021
そして90分が過ぎアディショナルタイムは4分と告げられる。残り時間が少なくなっても集中を切らさずに徹底して相手にボールをもたせて奪うチャンスを伺う。90+3分、相手ボールを⑧澤が奪い⑦塩谷が受けて攻め上がる、最後のカウンターのチャンス。しかしハーフウェーラインを超えたところで相手DFがファールで止めイエローカード、FKのチャンスを得る。キッカーは途中交代で入った⑩山藤、古巣相手にどんなキックを見せるのか。しかし強い向かい風を考慮して長いボールは入れず近くの㉔池田にパス、そして池田が中へ放り込み⑦塩谷が頭で合わせるがミートせずに枠の外。
アディショナルタイム4分が過ぎる頃、審判が時計を見る。最後のプレーはHonda FCボール。ラストプレーを終わらせるべく前からプレスに行く㉘寺下、それを交わして相手DFが横にパス、そしてそのボールをワンタッチでヴィアティン三重DFの裏へ送る!抜け出した相手選手は2人、追いかける㉝奥村は一歩遅れる。前に出るGK㉑加藤大喜。もつれながらサイドネットに流し込まれて失点。
ほとんどロングパスを使っていなかったHonda FCが、ラスト3秒に見せたDFの裏を狙ったロングパス。そしてあの状況で正確に流し込んだHonda FC⑯川浪選手のシュート。そのクオリティと勝負強さには、敵ながらあっぱれと言わざるを得なかった。
94分まで切らさなかった集中力。呆然とピッチに座り込む選手たち。今シーズン、何度「決めきるところ」「決定力」という言葉を使ってきただろう。28試合やってきてもその言葉を使うしか表現できない内容で大切なゲームを落としてしまった。あのシュートを決めていれば、95分のラストパスにもっと寄せていれば、抜け出されたところで身体を預けてでも阻止していれば…。今日の試合はもう帰ってこない。そのことは立ち上がれない選手たちが一番よくわかっていた。
フォトギャラリー①
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公式記録
NEXT MATCH 11/7 日 vs MIOびわこ滋賀
- 第23回 日本フットボールリーグ 第30節
- 試合日程:2021年11月7日(日)
- 対戦相手:MIOびわこ滋賀
- 試合会場:朝日ガスエナジー東員スタジアム
- 開始時間:13:00キックオフ