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あと1点わずかに届かず、J1名古屋グランパスに惜敗。

2023年06月09日 

 

 

前半45分を終えて3失点、シュート数は開始5分に放った寺尾憲祐の1本のみ。セットプレーから為す術なく2失点、そのあと円陣を組んで気持ちを落ち着かせたがさらに失点。自分たちのスタイルはある程度発揮できていたものの、前半は決定的な場面を一度も作らせてもらえず、今季J1で3位と好調な名古屋グランパスを相手に絶望的な状況と思われた。

しかし勝負はここからだった。ハーフタイムに三枚替え、ピッチに向かう勇ましい表情の選手たち、そしてまだまだここからだと言わんばかりにさらにボルテージを高めるオレンジ色のサポーター達。

まずは早い時間に1点が欲しいヴィアティン三重、システムを変えて臨んだ後半、樋口監督の采配が奏功する。71分に絶対的エース⑩田村翔太のゴールが生まれ勢いづく。続いて76分には1点目のアシストをした⑮梁賢柱(ヤン ヒョンジュ)が2点目を決める。そこからは完全にヴィアティン三重の流れに。終盤はアディショナルタイムの仕事人・⑨大竹将吾が見せ場を作ったが最後の1点が奪えずタイムアップ。最後の最後まで名古屋グランパスを苦しめたがあと一歩のところで高く分厚い壁を崩すことができなかった。

 

 

第103回 天皇杯2回戦・試合結果

ヴィアティン三重 2-3 名古屋グランパス(J1)
(0-3/2-0)

  • 2分:②野上結貴・名古屋グランパス
  • 35分:⑬藤井陽也・名古屋グランパス
  • 42分:㊷貴田遼河・名古屋グランパス
  • 71分:⑩田村翔太・ヴィアティン三重
  • 76分:⑮梁賢柱・ヴィアティン三重

 

前半・重くのしかかる3失点、闘えてはいるがチャンスは少ない

 

天皇杯2回戦、誰もが楽しみにしていたこの日がやってきた。17時にチームバスがパロマ瑞穂ラグビー場に到着、サポーターも同時に入場開始。バックスタンド東側に真っ赤なグランパスサポーター、西側にはオレンジ色のヴィアティンサポーターが陣取る。平日開催にも関わらず三重から多くのサポーターが集まり試合前からワクワクがとまらないサポーターたち。2014年、2019年とJ1クラブとの対戦を経験したことがあるサポーター達はJクラブとの対戦がどれほどアツいものかを知っている。

18時過ぎ、選手たちがピッチに登場。早くもボルテージはMAXに。いつも以上に引き締まった表情を見せる選手たち。バックスタンドにできたオレンジの壁を前にしてより一層気持ちを高める。試合開始直前、相手スタメン選手の負傷により代わりに⑩マテウス選手がスタートから来ることを知らされざわつくヴィアティン陣営。

 

 

19時、名古屋ボールで試合開始。やや硬さが見えるヴィアティン三重の選手たち。開始から1分足らず、自陣でフリーキックを与えてしまう。ゴールまでは30mあまり、蹴るのは名古屋の㉔河面選手。左脚で高く蹴られたボールは大きな弧を描いて上から落ちてくる。ゴール前に走り込む名古屋の選手たち、身体を寄せるヴィアティン三重の選手たち。抜け出して来たのは名古屋②野上選手。㉟寺尾が競ろうと身体を寄せるが相手が強く倒されてしまう。そのままダイレクトで合わされて失点。課題のセットプレーから早々に失点し苦しい入りに。

 

 

気を取り直して試合再開。5分過ぎ、中央から繋いで㉟寺尾がドリブルで運ぶ。前が空いたのを見て距離はあったがミドルシュート。枠は逸れたが相手の速さに少しずつ慣れてきた様子。名古屋は後ろからビルドアップ、スペースを見つけて前方へロングボールを入れてくるがさほど精度は高くなく②谷奥・⑲児玉が対応しゴールには近づかせない。セカンドボールへの反応も良く徐々にヴィアティン三重らしい動きを見せ始める。相手は3バック、中央では数的有利でスペースができ、パスが繋がるヴィアティン三重。両サイドから深いところまで持ち込み相手ゴールに近づくが、そこから中へ入れられない。

 

 

18分、ヴィアティン三重が右サイドから運んでコーナーキック獲得、キッカーは⑬安西。バックスタンド東側、グランパスサポーターの目の前、コーナーポストにボールを置く。名古屋サポーターから強烈なプレッシャーをかけられるが集中している安西、気にする様子もない。いつも通り高いボールを入れたが相手のゴール前の強度が高く簡単に跳ね返されてしまう。

 

 

20分、最終ラインから左に展開するヴィアティン三重。㉕藤澤と⑳金のコンビネーション、普段より速いパスとワンタッチプレーで一気に左サイドを破る。㉕藤澤は相手に厳しく寄せられても倒れない、そのままゴール前に運び相手に止められるがこぼれ球を⑳金が回収、⑤菅野に預け⑬安西とのリズミカルなパスワークで名古屋の選手を翻弄する。再び左に開いた金が受け、中に入ってきた㉟寺尾に鋭い横パス、寺尾が落として走り込んできた⑯橋本が受けてボックスの深いところまで運ぶが相手の脚が伸びてきて止められる。鮮やかなパスワークで崩すが決定機は作らせてもらえない。25分には右サイドで裏に抜け出した⑩田村へ㉔池田から絶妙のパス。受けた田村が深いところから中へ折り返すが簡単にブロックされる。

 

 

試合開始から30分が過ぎ、ヴィアティン三重がボールを保持する時間が長い。しかし攻撃に時間がかかると相手の最終ラインは両サイドが降りて5枚になり簡単に中へ入らせてもらえない。その分、中盤で優位にボールを回し何度もトライするがジリジリと圧力をかけられミスからボールを奪われる。ところが奪われても谷奥・児玉がしっかりと身体を寄せて相手を自由にさせずチャンスは作らせない。最初の失点以降、流れの中でボックスに入られての危ない場面は一度だけ。

 

 

34分、パスミスから相手のカウンター。スペースに走る名古屋㊷貴田選手、追いかける②谷奥。上手く先に身体を入れコーナーキックに逃れる。相手の右からのコーナーキック。中央にいた③丸山選手のマークに付いていた②谷奥が釣り出され、ファーサイドの⑨酒井選手が折り返して中にいた⑬藤井選手が合わせて名古屋の追加点。⑨酒井選手に付いた㉔池田は身体をぶつけられ飛ばせてももらえなかった。それまで谷奥が完全に抑えていた⑨酒井選手に仕事をされて沈むヴィアティン三重の選手たち。しかしリスタートする前に集まり輪になって言葉を交わし、やるべきことの確認だろうか、再びファイティングポーズを取る。

 

 

42分、ヴィアティン三重陣内、相手右サイドからのスローイン。ボールを入れた名古屋㊻石田選手がフリーで簡単にクロスを入れる。GKとDFの間に入れられた速いクロスに㊷貴田選手が合わせ3点目。J1の精度の高いラストパスとフィニッシュを見せられ打ちのめされる。43分、右サイドでボールを奪われ名古屋の高速カウンター。左からのクロスが入り⑨酒井選手が倒れ込みながら押し込んだがふわっと浮いたボールにGK①モリケンが神がかり的な反応を見せ左手を伸ばして掻き出す。あわや4点目を与えるところだったが守護神モリケンのスーパープレーがチームを死の淵からすくい上げた。3点ビハインドで前半終了。

 

 

 

後半・システム変更から前への勢いを高め反撃開始

 

ハーフタイムに三枚替え、⑤菅野→⑨大竹、⑯橋本→⑪上田、㉕藤澤→④寺田の3人が入る。最終ラインは左から⑲児玉・②谷奥・④寺田の3バック、⑪上田は左ウイングバックに、⑯橋本の位置に⑳金が降り、⑨大竹はトップに入り⑩田村は左にさがった位置へ。立ち上がりから⑨大竹と⑩田村が前からプレッシャーをかけ良い動きを見せる。3点のビハインドは感じさせない。④寺田から⑨大竹を狙ったロングボールを入れる、ゴール前での泥臭いプレーを得意とする大竹、J1の選手を相手に全く怯まない。相手よりも一歩でも早く前に出ようと身体を預けてもつれ倒れる。早速の大竹らしいプレーに大歓声のヴィアティン三重サポーター席、まだまだ試合はここから。

 

 

64分、㉟寺尾→⑮梁が入り⑩田村・⑨大竹がツートップ、⑮梁はトップ下の位置に入った。65分、右サイドで⑳金と⑮梁でボールを奪い取り、入ったばかりの⑮梁がドリブルでボールを運ぶ。前には田村と大竹が走り相手DFを引き付ける。ボックス付近まで運んだ梁が左脚でシュート。ここはミートできずGKがキャッチ。しかし梁が入ったことで前への推進力が生まれた。

70分、後半から入っていた名古屋⑮稲垣選手がゴール前中央でボールを受けボックス内の㊻石田選手に鋭い縦パスを入れる。そして受けた石田選手がシュート、しかしここは枠を大きく逸れる。その直後、GKモリケンからのゴールキックを受けた⑮梁、相手3人を引き連れたまま一気にゴール前に迫る。その前を横切り左に開く⑨大竹、相手DFの意識が大竹に引っ張られたところで右の裏にできた大きなスペースを狙って走る⑩田村、ボールを運ぶ梁は一瞬右後方から来る㉔池田に目をやりすぐに右を走る田村へ絶妙のタイミングでスルーパス。トップスピードでボールを受ける田村、ニアサイドに詰めてシュートコースを消す相手GK、身体は右に流れながらもダイレクトで右足を振る田村、唯一空いていたGKの頭上を狙ったスーパーゴールを突き刺した。待望のゴールも笑顔一つ見せない田村、ラストパスを出した梁とタッチしすぐにセンターサークルへ戻る。残り20分、まだまだここから。

 

 

 

1点返し俄然盛り上がりを見せるサポーター、闘志みなぎるヴィアティン三重の選手たち。相手もややプレー強度を上げてボールを奪いに来る。しかし奪われてもすぐに二人がかりで挟み奪い取る。70分すぎに寺田、谷奥、安西が立て続けにイエローカードをもらう。ファールは褒められるものではないが、強度を落とすことなくぶつかり、簡単にはボールを運ばせない。

 

 

76分、最終ラインからビルドアップ。縦方向はコンパクトに、左右は広く使うヴィアティン三重、右から左へ運び、また右に展開して相手を引き付ける。後半からボランチに入る⑳金が右サイドで受けワンタッチで④寺田に下げる、ボールを受けた寺田が顔を上げたと同時に⑨大竹、⑩田村、⑮梁が動き出す。右のスペースに走る田村を狙って寺田が彼の性格のように優しく正確なロングフィードを入れる、走る田村、ヒールでフリックし後ろから来る梁へ落とす、フリーで受けた梁、トラップして前へ運びニアサイドを狙って豪快に右足を振る。シュート力が持ち味の梁が放った強烈なシュートはゴールキーパーの手を弾きゴール突き刺さった。完全に名古屋の守備を崩した鮮やかなゴールシーンにヴィアティンサポーター席はお祭り騒ぎ。悲鳴とも歓声とも言える叫びが夜の空に響く。あと1点、あと15分、まだまだだ。

 

 

 

78分、勢いが止まらないヴィアティン三重。最終ラインを高く上げ全員が相手陣内に入り右サイドから崩しにかかる。㉔池田からのパスを受けた⑳金、ワンツーと見せかけてターン、一気に相手を振り切る。バイタルエリアまで入り中の⑨大竹にパス。しかしやや焦ったか相手DFに引っかかりクリアされてコーナーキックに。そして右コーナーから⑬安西のコーナーキック。走り込んだ大竹がニアでスラして奥に走り込んだ⑲児玉が飛び込むが届かず、流れてしまう。それを追いかける②谷奥、ライン際ギリギリでキープ、相手に当ててスローイン獲得。そのプレーに沸き立つヴィアティン三重サポーター。

 

 

その直後にゴールに迫られる危ない場面を迎えるが全力で戻った⑳金が身体を張って阻止、決定的な場面を未然に潰すがそのあとのプレーでフリーキックを与えてしまう。先制点を許した場所とほぼ同じ位置、名古屋サポーター席の目の前で強烈な圧力を受けながら壁を作る。ここは相手のキックが枠を逸れ事なきを得る。ここからは一進一退の攻防、しかし狭いスペースでのパス回しでは負けていないヴィアティン三重、奪われてもどこまでもしつこい守備で絡め取る。勢いはまだヴィアティン三重にある。

 

 

86分、⑳金→⑰野垣内。野垣内の高さを追加して最後のパワープレーを狙う。②谷奥184cm・⑨大竹182cm・④寺田180cm・⑪上田180cm、そして⑲児玉と⑰野垣内は170cm台だが抜群の跳躍力を武器とする。今年のヴィアティン三重は高さでも勝負できる。

互いに最後の力を振り絞り目まぐるしく攻守が入れ替わる展開、しばらくボールが落ち着かなかったが90分、相手が最終ラインから左サイド⑰森下選手に出したところを㉔池田が絡め取る。中央には⑨大竹ひとり、池田は右に開きながら仲間が入ってくるのを待つ。そこへ襲いかかる名古屋のレオナルド選手、しかしこれぞ池田直樹!と言わんばかりの見事な切り返し、まるで合気道のようにレオナルド選手をかわしファーサイドで相手DFの背中を取った⑨大竹にクロスを送る。なんとか左脚を伸ばした大竹だったが角度がほとんどなくサイドネット。ヴィアティン三重サポーター席からは悲鳴と歓声とため息混じりの叫びがあがる。先日の高知戦で劇的AT弾を決めた大竹に全員が祈りを届けた瞬間だった。

 

 

 

90+2分、相手陣内で安西がファールを受けてフリーキック獲得。㉔池田とキッカーの⑬安西以外は全員ゴール前に入る。安西のキックは⑰野垣内を狙っただろうか、ゴール前の競り合いでは相手がフィジカルの強さを発揮、大きく跳ね返した。そして90+3分、GKモリケンからのロングフィード、⑲児玉が相手選手と競り、セカンドボールが⑨大竹のところに転がる。反転した大竹と⑮梁が少し重なりかけたがすでにシュート体制に入っていた大竹が左脚を振る。しかし無常にもわずかにゴール左に逸れてしまう。またもスタンドからは悲鳴と歓声とため息。

 

 

 

アディショナルタイムの4分間、ほとんど相手陣内でプレーし、最後までJFLのヴィアティン三重がJ1名古屋グランパスを押し込み続けたが同点ゴールを奪えないままタイムアップ、すべてを出し尽くしたヴィアティン三重の選手たちはピッチに崩れ落ちた。

 

 

1993年のJリーグ発足以来、東海の雄として君臨するオリジナル10・名古屋グランパス。ヴィアティンファミリーのみならず、三重県サッカーファンの誰もが夢見た名古屋グランパスとの公式戦での闘い。その夢のような90分は誰も予想しなかったドラマティックな展開で幕を閉じた。

1点目・2点目はセットプレーから、3点目もクオリティの高いクロスからピンポイントで合わされて失点「さすがJ1、さすがグランパス」と言わざるを得ないゴールシーンだった。45分を終えた時点では多くのヴィアティンサポーターが心の奥底に絶望感を抱きかけていたと思う。しかし我々が常に掲げているマインドは「Never Stop Challenging. 〜挑み続けろ〜」そう、ここで諦めないのがエンブレムにロイヤリティを誓ったヴィアティン三重の選手たち、そしてJFL最強を自負する我々サポーターだ。

 

 

後半は全員が力を振り絞り、限界の向こう側を感じさせるプレーで最後の最後まで名古屋グランパスを追い詰めた。試合後の会見で名古屋・長谷川健太監督に「敵ながらあっぱれ」と言わしめた。

長谷川監督・公式会見より一部抜粋:”ヴィアティン三重の頑張りには頭が下がるなと思っています。あの状況の中で最後まであきらめずにボールに向かう姿勢、最後にもう1点取られても仕方ないなと腹をくくっていましたし、それぐらいの勢いがありました。非常に素晴らしいサッカーを最後までやっていて、敵ながら「あっぱれ」と思っています。我々も最後までリーグ戦のメンバーを切った中で2点取られたので、ヴィアティンの力を素直に認めるしかないと思っています。”

試合後会見でのヴィアティン三重・樋口監督は「率直に悔しい」が第一声だった。試合終了のホイッスルが鳴った瞬間、ピッチに崩れ落ちた選手たち全員からその気持ちが伝わってきた。試合の入りこそややリスペクトし過ぎた感はあったが、目を覚ましたオレンジの獅子たちは最後まで文字通り「勇敢に」闘った。我々にとってはある意味「世紀の一戦」とも言える、J1 vs JFLの愛三ダービー。負けはしたものの一生忘れることができない感動的な名勝負となった。そしてチームにとってはここまで積み上げてきたものへの自信となり、自分たちの持つ可能性を大いに実感できる機会になったことだろう。

 

 

これまでずっとチームを応援してきた人も、この試合で初めてヴィアティン三重を応援してくれた人も、素晴らしい闘いで魅了してくれた彼らのことを誇りに感じたことと思う。それと同時に、選手たちもヴィアティン三重サポーターのことを心から誇りに感じただろう。30年を超える伝統を持つ名古屋グランパスサポーターに一歩も引けを取らなかったサポーターの後押しが、後半の大反撃に力を与えたことは誰よりもピッチにいた選手たちが知っている。そしてもうひとつ、このクオリティのフットボールをJFLでも発揮できれば、我々のチームはもっともっと勝ち続けることができると選手もサポーターも確信したはずだ。

 

 

2023年、初夏のお祭りはここで終わり。今週末は中3日でアウェーでラインメール青森とのJFL第11節が待っている。10節を終えて勝点13の9位、どのチームも連勝すればすぐに上位に上がれるチャンスがある。近年稀に見る混戦、連勝すれば上位進出、連敗すれば降格圏に転落。ここからまた気持ちを引き締めてひとつひとつ勝利を目指して闘おう。

 

 

 

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