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上野展裕監督インタビュー:the INTERVIEW 2020
ヴィアティン三重を率いて2年目のシーズンを迎える上野展裕監督。緻密な戦術と情熱的な指導で選手たちを導き、攻撃的で魅力的なチームを作り上げた。リーグでは目標とする4位に届かなかったものの、混戦を極めた中位グループでしのぎを削った結果、5位と勝点1差での10位でシーズンを終えた。
しかし天皇杯では三重ダービーを制して三重県代表の座をを勝ち取り、2回戦では湘南ベルマーレに完勝、続く3回戦ではV・ファーレン長崎を延長〜PKまで闘い抜いて苦しめた。惜しくも二度目のジャイアントキリングは果たせなかったが「JFLにヴィアティン三重あり」とその名を全国のサッカーファンに轟かせることができた。
2年目の上野サッカーは更にクオリティと精度を高め、新加入選手のチカラも加わることで、またさらに魅力が増すことだろう。そしてその先には「J3昇格」という大きな目標が待っている。
そんな大きな期待を背負った上野監督に、練習後にインタビューに答えてもらった(2020年2月上旬に取材)。
ベストを尽くした、しかし「もったいない」シーズンだった
VTM:上野監督にとって、昨年はどんなシーズンでしたか?
選手たちは全力でトライし、ベストを尽くしてくれたシーズンでした。そしてサポーター、支援してくださる方々に支えられた2019年シーズンでした。
良いところもあり、うまく行かなかったところもあり、成績に関しては少しもったいなかったと思っています。僅かな差でしたが5位にはなれたのではないかと思います。最終節もいい流れで進めていたにもかかわらず同点で終わってしまった。とてももったいなかったです。
それまでの試合ももったいない試合が多かったと感じていますので、全体を通して「もったいなかった」シーズンでした。
JFLは「一筋縄ではいかないリーグ」である
VTM:これまでJクラブで指揮を執られてきた上野監督にとって、久しぶりのJFLはどんなリーグでしたか?
JFLは簡単なリーグではないですね。HondaFCさんのようにJ2でも十分闘えるぐらいの実力があったり、今季昇格されるFC今治さんのようにJ3でも中位から上位を狙えるほどのチカラを持ったチームがあったり。そして我々のように昇格を目指すチームもいれば、すでにライセンスを持ったチームもいる、そして残留争いもある。様々な特色を持ったチームが競い合う難しいリーグだと思います。
VTM:その「難しさ」というのは具体的に言うとどういった点があげられますか?
「難しい」というのを別の言葉で表現すると「一筋縄ではいかない・簡単ではない」リーグだと言えます。先程も言った様々な特色を持ったチームがいる点に加えて、J3には降格がありませんがJFLには降格があります、降格しないためにはリトリート(自陣に引いて守りを固めること)してきたり、戦い方を変えてきたり。また、HondaFCさんのように昇格を目指さずとも非常に質が高いサッカーをするチームもあります。そこが一筋縄ではいかないところだと感じています。
VTM:それは試合ごとの準備も対戦相手によって大きく異なってきて、準備・対策が大変ということでしょうか?
はい、まさにその通りです。対戦相手によってそれぞれ対処しなければなりません。
VTM:昨シーズンは、しっかりとパスを繋いでコンパクトなサッカーをする相手とは相性が良く、ロングボールを多用したりパワーで押し切るようなチームとは相性が良くなかったような印象がありますが…。
それはあったと思います。それを踏まえて自分たちは戦術的なところを徹底したり、相手によって対処する選択肢を持ちながらチーム作りをしていきたいと思います。
昨年築いたベースの底上げと、新しい選手との融合を目指す
VTM:今日の練習(2月上旬の取材時)を見て、チーム作りの部分でスタート地点が昨シーズンとは大きく違うと感じました。今季指導して1ヶ月ほどでチームとしての形がすごく出来ていると感じたのですが、上野監督の手応えや感触はいかがでしょうか?
昨年のベースが残っているところはすごく良いところだと思います。そして新しいメンバーがたくさん入ってきて、そこをどのように融合させていくのか?それと同時に昨年から積み重ねてきたベースのレベルをもっと上げていきたい。今はまだ融合させる部分と底上げをする部分とが行ったり来たりしている状態です。融合させるぞ、ベースを高めるぞ、よし出来た!いやここは無理だった、というように行ったり来たり…まだリズムが掴めていない状況ですね。まだしっくり行っていないですね。
VTM:今季新加入の選手たちはレベルの高い選手も多くて、チームが目指すサッカーやトレーニングにスムーズに入れている「順応性の高さ」を感じますが、監督の印象はいかがでしょうか?
それは同じように感じています。たとえば佐藤洸一選手は非常にレベルが高い選手です。J2のトップレベルだと感じました。J1を狙えるだけのチカラを持っている選手だと思いますし、本人も狙いたかったと思います。しかし本人が意思を持って、ヴィアティンを昇格させる、地元三重で頑張ろう、という思いでヴィアティン三重に入ってくれましたので、彼の加入は大きいと思います。人間性も素晴らしいです。
さらには望月嶺臣選手や、他にも技術が高い選手が多いですし、新卒の選手たちも実績のある選手がいたり、良いポテンシャルを持っていたり、レンタル移籍で来てくれた選手もいたり、それぞれが特徴を持った良い選手が集まってくれたと思っています。
若い選手が多いのですが、今季は「昇格」というものが目の前に迫ってきている緊張感のある状況で1年間サッカーをすることになりますので、特に若い選手たちは飛躍的に伸びると思いますし、精神的にも大きく成長できると思います。
補強の狙い「得点のクオリティを高めること」
VTM:今季の補強について、チームとしてどのようなコンセプトをもって選手の獲得をされたのでしょうか?
一番は「得点のクオリティを高めたい」という狙いがありました。プレーの最後「エンド・プロダクト」の部分、クロスを上げたり、ラストパスを通したり、シュートを決めたり、それをできる選手を獲得したかった、その可能性を持った選手に来てもらいたかったです。
そして日々の練習のなかで、その精度(エンド・プロダクトの部分)を高めていきたいです。そこは昨年からいる選手たちに求めることも同じで、最後の部分の精度を高めて欲しいと思っています。
ですので今季は練習後にシュート練習ばかりやっています(笑)これがなかなか入らない…(笑)でも練習しなければうまくはならないので、そこはやるしかないと思っています。目指すレベルを100とすると、現時点で2〜3ぐらいでしょうか(笑)100まではかなりありますが、地道にやっていきます!
VTM:ということは、補強については意図した部分は達成できたということでしょうか?
はい、良い選手がたくさん来てくれたので、良い補強ができたと思っています。
昨シーズンは決定機会に外してしまったり、決めたら終わり、入れたら終わりという場面で決められないことが多かったですし、パスがうまく通せなかったり、クロスの精度もそうですね。そこを解決していこうと思います。
戦術の徹底と、どの選手が試合に出ても同じことができる状態にする
VTM:さきほどゲーム形式の練習を見ていての感想ですが、今季は実力がある選手が多く加入したこともあって、各ボジションそれぞれにチカラが拮抗しているように感じます。昨年は固定メンバーで闘うことが多かったと思いますが、今季はポジション争いも激しくなっていろんな選手が出場することになりそうですか?
はい、それはあると思います。見ていただいた通りポジションごとに実力が拮抗してきているので、その時に状態が良い選手が試合に出るのが本来は一番良いことですので、それぞれの選手が戦術を徹底して、誰が出場しても同じことができるという状態にいつもしておきたいと考えています。
VTM:レベルの高い選手が加入したことで、メンタルの部分でチームに与える影響はありますか?
たとえば佐藤洸一選手はよく引っ張ってくれていますね。練習後に若い選手たちと積極的にコミュニケーションをとってくれています。先程も言った通り、J1をも目指せるチカラを持った選手が三重のために加入を決めてくれて、我々ヴィアティン三重をJ3へJ2へ、そしてJ1へ引き上げてくれる原動力になってくれると思います。
VTM:今季は「昇格」という目標が目の前に迫ってきています。選手たちにのしかかるプレッシャーは相当なものだと思いますが、メンタル面の指導などはされていますか?
メンタルトレーニングのようなものはやっていませんが、普段のトレーニングの中で働きかけていきたいとは思っています。どんどんプレッシャーがかかってきますし、期待を背負うことになりますので、それを受け止めながらも元気よく、楽しくサッカーをしてほしい。良い雰囲気でチームを導いて行きたいと思っています。
目指すのは全員攻撃・全員守備、お互いが助け合える距離でのプレー
VTM:今シーズンも昨シーズンのスタイルを継承しつつ精度を高めていく方向性だとは思いますが、今年からあらたにヴィアティン三重を応援してくれるファンに向けて、今季ヴィアティンが目指すサッカーはどんなものなのか、あらためてお聞かせください。
昨年と同じにはなりますが「全員攻撃・全員守備」でチームがひとつにまとまって、お互いに助け合える距離でやっていきたいと思います。お互いが助け合える距離で攻撃し、助け合える距離で守る、そんなサッカーを追求してきたいと思います。
VTM:普段の練習を見ていると、それを浸透させるために徹底的な反復練習をされているのをよく目にします。細かなところを徹底して繰り返す練習は学習能力と忍耐力が求められそうですね。
刷り込みですね(笑)とはいえ楽しいところも必要だと思いますので、ゲーム形式のトレーニングを増やすようにしています。途中にミニゲームをいれたり、最後はゲーム形式で終わったりしていますね。楽しめるトレーニングと徹底して身につけるトレーニングの両方があればよいかなと考えています。
最後まで共に闘い、みなさんと一緒に昇格したい
VTM:さて、いろいろなお話を聞かせていただきましたが、2020年ヴィアティン三重の「みどころ」を上げるとすればどんなところでしょうか?
何度も言っていますが「ひたむき」なところ「汗の結晶」を見ていただきたいと思っています。最後まで諦めない姿、最後まで徹底してやり切るところ、ここを見ていただきたいですね。
選手個人のみどころを上げるとすれば、佐藤洸一選手のプレー、ゴールはぜひとも見て欲しいですね。プレーだけでなく彼の「意思」ヴィアティン三重を昇格させるために地元に戻ってきたという強い意思も見て欲しいです。
VTM:最後になりますが、これまでのキャリアの中で「昇格」という場面を何度か経験されている上野監督からサポーターのみなさんへ、経験も踏まえた上でぜひメッセージをお願いします。
はい、一緒に上がっていきたいんですよね。「一緒に」
1年間のシーズンを闘う中で、苦しいときが必ずあると思うんです。そのときに一緒に闘って頂きたいですし、背中も押して欲しいです。自分たちは最後まで諦めずに闘いますので最後まで一緒に闘ってください、よろしくお願いいたします。