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PKに泣き、PKに泣く。ホームでホンダロックSCに敗れる。

2020年10月25日 

後半アディショナルタイム90+3分、1点を追いかけるヴィアティン三重、相手ペナルティエリア内でハンドの反則があり、PKを得たヴィアティン三重。試合全体を通して完全に相手にペースを握られていた展開、アディショナルタイム1分を残して奇跡的に同点のチャンスを得た。キッカーは⑱佐藤洸一、今季J2ヴァンフォーレ甲府からヴィアティン三重に移籍。地元三重に初めてのJリーグチーム誕生を実現させるべくやってきた男。その右脚から放たれたシュートは無情にも相手GKに読まれゴールならず。勝点1に手を掛けながらも取りこぼしてしまった。今季5敗目、ホーム・アサスタに悲鳴にも似たため息が低く響いた。

ヴィアティン三重 1-2 ホンダロックSC
(前半0-1・後半1-1)

  • 37分:ホンダロックSC・髙原大知⑬
  • 65分:ホンダロックSC・佐々木 翼㉓
  • 85分:ヴィアティン三重・野垣内 俊⑰

試合終了後・上野監督コメント

インタビュアー:今日の試合を振り返って下さい。

上野監督:まず最初に、700名を超えるサポーターのみなさんが集まってくださいました。声はまだ出せない状況ですが、スピーカーからの音声と太鼓と、力強い拍手で選手を後押ししてくれました。本当にありがとうございました。にもかかわらず、負けてしまって申し訳なく思います。

試合に関しては、ホンダロックさんが風下の時、風上の時、両方でうまく攻撃をされていました。それに対して我々がなかなか対処できませんでした。1失点目は素晴らしいフリーキックを決められてしまいました。あのフリーキックを与えた場面はファールで止めるカタチになってしまいましたが、良い攻撃をされたと感じていました。2失点目はPKを与えてしまって反省すべき点だと思います。そこから1点返してもう1点というところでしたが最後にPKを止められてしまいました。あのPKを決めていて引き分けに持ち込むことができれば我々にとって御の字だったかもしれませんが、今日のホンダロックさんのパフォーマンスから考えると、今日の結果は妥当だったと受け止めています。

しかし、悔しさは残っていますしまだ諦めたわけではありませんので、この次の試合に向けて準備をしたいと思います。先程も選手たちとロッカールームに戻って「下を向かずにもう一度闘おう」と話しましたので、次に繋げていきたいと思います。

インタビュアー:前節と比べて前半からプレーしづらそうにしているように感じました。監督から見ていかがでしたか?

上野監督:先週と比べて風が強かったので、下からパスを繋いでいこうとしたのですが、なかなか繋ぐことができませんでした。平信が怪我をしていて出られなかったために太田賢吾が慣れない右サイドハーフをやってくれたのですが、急造だったこともあって右サイドからの連携が難しかったと思います。左サイドは久しぶりに井上丈が戻ってきてくれましたのでもう少しうまく連携できるかと思いましたが、ホンダロックさんのプレスの速さにけされてしまいました。

インタビュアー:後半早い段階で選手交代をされました、そこの意図を聞かせて下さい。

上野監督:1点取られていましたし、代えようとすでに決めていた時にファールをしてPKを与えてしまいましたので、すぐに交代してフレッシュな選手を投入し、早め早めに手を打ちました。

VTM:試合全体を通してなかなかチャンスを作ることができなかった印象ですが、先程言われた「ホンダロックさんのパフォーマンスが上だった」という事以外に、ここが上手くいかなかったという気になるポイントがあれば聞かせて下さい。

上野監督:風が強くてもしっかりと下で(低いボールを)繋いでやっていこうと話していました。後半は比較的上手く繋ぐことができていたと思うのですが、それを前半の最初からやって、チャンスを作るようにしたかった。前半はチャンスに繋がりそうな場面で早めにボールを失ってしまうことが多かったので、あそこでもっと広く展開して攻撃に繋げることができていたらもう少し良い展開になったのではないかと思います。慌ててしまう場面が目に付きました。そこはもっと練習を積まなければならないと感じました。

VTM:ヴィアティンのサッカーをする上では風上と風下を考えた場合、風下の方がやりやすいのでしょうか?

上野監督:いえ、どちらの状況でもそれに合わせたサッカーをするべきだと思います。そういった面ではホンダロックさんは前半風下に立った時も上手く攻撃されましたし、後半風上に立った時も上手く時間を使って良い攻撃をされたと思いますので、我々はそれを見習うべきだと思います。

記者:65分にDFの2人(奥村→寺田・井上→野垣内)ボランチの1人(望月→西村)を一気に交代した意図を聞かせて下さい。

上野監督:センターバックの奥村を代えたのはイエローカードを貰っていたことと、少しパフォーマンスが落ちていたため、練習でパフォーマンスを上げてきていた寺田に代えました。井上丈は怪我明けでしたので60分間ぐらいを目安に交代させようと考えていましたので、先週は先発してコンディションが良い野垣内に交代しました。ゴールを決めてくれてよくやってくれたと思います。ボランチの望月嶺臣は高いボールが上を超えることが多かったり、セカンドボールに上手く対応できていないところがあったことと、コンディションが100%ではなかったので西村に代えました。

記者:前節も出場していた新加入の池田選手がとても良い動きをしていました。池田選手についてはどのように評価されていますか?

上野監督:入団して2週間、とても良くやってくれています。本来持っているチカラはもっとありますし、時間をかければ連携ももっと良くなると思いますので今後のさらなる活躍に期待しています。

記者:佐藤洸一選手を見ているとあまりコンディションが良くないように感じたのですが、90分出続けるだけの状態にあるのでしょうか?

上野監督:足の怪我があったり、腰を痛めていたり、コンディションが完全に整っているとは言えないと思いますが、徐々に上がってきているのでこれからもっと良いパフォーマンスを見せてくれると思います。

野垣内俊選手・試合後インタビュー

インタビュアー:今日は途中出場で今季初ゴールでした。ゴールシーンを振り返って下さい。

野垣内選手:ボールがこぼれてくることを予測してあの場所にいたらそこにボールがこぼれてきました。前が密集していたので当てないように意識して蹴ったら上手くゴールに入ってくれました。

インタビュアー:前節、東京武蔵野シティFC戦の前に野垣内選手が選手たちのモチベーションを高めるために映像を作って選手らに見せられたとお聞きしました。そのことについて教えて下さい。

野垣内選手:その情報が流出したことにビックリしていますが…笑 2週間空くタイミングだったので、チームの気持ちが緩んでしまうかなと考えたり、残り試合数も減ってきていますし、少しでもみんなのモチベーションを上げてもらいたいと考えて作りました。

インタビュアー:その映像を見せた効果・変化は感じられましたか?

野垣内選手:あの試合では武蔵野さんは連戦続きだったのですが、僕たちは自分たちがやるべきことをやって、出し切って勝つことができました。それを自信にしていかなくてはならないですし、今日のような試合は絶対にしてはならないし…、昇格できるチームというのは「勝ちグセ」が付いてるチームだと思うので、今日の試合でも負けずに引き分けに持ち込んだり、勝ちにもっていくようなチカラが必要だと思っています。

VTM:今日の敗戦でまた厳しい状況になったわけですが、先ほど言われた「今日のような試合をしていてはいけない」と感じる理由。実際にプレーしている選手としては今日の試合のどんなところが良くなかったのでしょうか?

野垣内選手:試合数が減っていく中で、うちは若い選手が多いので、変にプレッシャーを感じてしまったり、ミスしてはいけないとか、負けてしまうんじゃないか?とか…そういう弱い気持ちが少しでもあったら球際の勝負に出てしまって結果に繋がってしまうのだと思います。現に、今季のJFLを見ると昇格がかかっていないチームのほうがすごく伸び伸びとプレーしているように感じます。そういう面でも「試合を楽しめるか?」選手それぞれが鼓舞しながらも笑顔があったり、そういうところをもっと増やしていかないとチームの元気が段々と無くなってしまったりするのだと思います。ですのでベテランの僕らがもっと盛り上げて行きたいと思います。

VTM:今日の負けを経て、週明けの練習の前に若い選手たちにどんな言葉をかけて練習をスタートさせますか?

野垣内選手:「開き直れ!」と言いましょうか。というのも、シーズンももう残り少ないですし、監督のやろうとするサッカーはみんな分かっていると思うので、それを分かった上で気持ちの部分で楽しむこと。そして楽しい中でも必死で闘うこと。一人ひとりが責任感を持って闘うことができればまだまだチャンスはあると思っています。

インタビュアー:最後にサポーターのみなさんにメッセージをお願いします!

野垣内選手:まだチャンスは残っているので、最後まで選手たちは闘います。サポーターのみなさんも一緒に闘って頂けるとチカラになります。引き続き応援よろしくお願いします!

前半・フリーキックからの失点、風上を活かせず…。

コイントスで風上を取ったヴィアティン三重。相手の速い寄せにパスが繋がらず思うようにゴール前に迫れない。セカンドボールも相手におさえられ、後手に回る場面が増える。前節に続いてスタメンに入ったGK・森建太①、前線へのロングフィードは風に乗ってコントロールに苦しむ。37分、池田直樹㉔が背後からのチャージを取られゴール前でフリーキックを与えてしまう。壁を超え、向かい風でドライブがかかったボールにGK森は一歩も動けず、塩谷仁⑦がジャンプするも届かず、ゴールネットに突き刺さった。前半終了間際に惜しい場面を迎えたが前半はシュート2本、1点ビハインドで後半へ。

後半・PKを与えて2点ビハインド、野垣内のゴールで1点差に迫るも…

後半に入って風下から相手ゴールを狙うヴィアティン三重。選手たちは気迫を見せるがペースを掴めないままに試合が進む。65分、相手のコーナーキックを一度は弾き返し、中に戻されたボールに対し詰めたところでまたしても背後からのファール。エリア内のためPKを献上。難なく決められて0-2。その直後にDF陣3枚替え、さらに流れを変えるべく続いて2人交代。右サイドの池田直樹㉔・河村英侑⑮が良い連携を見せて攻め上がる。そして迎えた85分、池田のロングスローからのこぼれ球に反応した野垣内俊⑰が技ありゴール!1点差に迫る(動画はコメント記事部分に掲載)。

その後も勢いに乗って相手ゴールに迫るが、ゴール前に人数をかける相手の硬い守備を崩せずゴールを奪えない。90分が過ぎてアディショナルタイムは4分、3分を経過したその時だった。クリアしようとした相手選手がエリア内でハンドの判定、90+3分にヴィアティン三重がPKを獲得、キッカーは佐藤洸一⑱!

 

慎重にコースを狙ったシュートは相手GKに読まれてゴールならず。天を仰ぐ佐藤洸一…そこで終了のホイッスルが鳴り響いた。

「開き直れ!」から始まる次の闘い。

試合を終えて、会見で野垣内が語った言葉を噛みしめる。

「試合を楽しめているのか?」「自分たちのサッカーをやれているのか?」これはチームを取り巻く我々にも言えるのかもしれない。「昇格」は絶対に果たしたい目標である。しかし我々はサッカーで笑顔になるために、サッカーを観て、情熱や感動を届けて楽しんでもらうことが第一だったはずだ。もちろんいろんなことを含めて考えても、今季は絶対に昇格したい。しかしその言葉や雰囲気が選手たちのパフォーマンスを発揮させられない要因になっているのだとすると、それは誰も望まないことだ。

残り5試合、負けられない闘いに違いはない。笑顔もなく必死の形相で選手たちはプレーし、悲壮感をにじませた表情でサポーターは声援を送るのか?それとも笑顔で楽しみながら、この苦境さえも楽しみに変えながら目の前の1試合1試合を闘い、その先に向かうのか?

「開き直れ!」という野垣内の表情に諦めはなかった。彼の持ち前の明るさで、次の練習からまた若い選手たちを引っ張ってくれるはずだ。彼らの闘いは終わらない、僕らの闘いも終わらない。あと5試合、楽しんだ先に喜びや感動があることを信じて見届けよう。

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