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「スペインFútbol 通信 vol.8」  後藤三知アドバイザー

2018年06月27日 

「スペインFútbol 通信」Vol.8

Hola!! オラ (Kaixo‼ カイショ :バスク語)

皆さん、こんにちは(^^)

2017-18シーズンの全日程が終了しました。チームは、リーグ戦年間順位は7位。昨シーズンから順位が一つ上がり、目標としていたCopa de la Reina (コパ・デ・ラ・レイナ)に出場しました。Real SociedadにとってのCopa de la Reina連続出場の記録を伸ばしましたが、初戦敗退という結果に終わりました。

今回は、スペインリーグで1シーズンを経験して学んだこと、感じたことを3つに絞り、ここで皆さんと共有させて頂きたいと思います。

まず、1つ目は「自分の意志、意見を持つ」ことの楽しさです。
スペインに渡り、最初に問われたのは、「あなたは、どういう選手で、どういう人間ですか?」というものでした。日本での私は、自分の意思を集団にゆだねて(合わせて)思考する習慣がついていて、自分という個人の意見や意思がわからなくなっていたようです。日本では、その方が生きやすかったのです。ですが、海外でプレーするということは、その国の文化、価値観の中で生活し、評価され、結果を出していくということです。これまでの自分の当たり前が、当たり前ではなく、その違いを簡単には理解してもらえない世界では、自分に向き合う必要がありました。

こちらでは、「1(個人)」という単位が消えることがなく、個人の特徴、個性がベースにあり、その集まりがチームであり、クラブであり、家族や街を大切にする文化のベースになっているように思います。集団は、あくまでその「1」という単位の集まりという考えが根付いているように思います。
Futbolにおいても、ピッチの広さ、ゴールの位置、ルール、人数などは同じですが、勝負を左右するのは個々のプレーであり、違いを生むのは個性であるという考えにも出会えました。
スペインという国において個性とは、良い・悪いという見方ではなく、一人一人が持っている個性を縦ではなく横並びにして捉え…あくまで“違い”として扱っているように思います。

また、スペインには「サッカーは楽しむものであり、楽しむことが良いパフォーマンス発揮に繋がる」という考えがあると思います。日本にいるときの自分は、サッカーを楽しむことと勝つためにプレーすることは別物のような感覚でした。ですが、サッカーはあくまで遊びの延長であり、“サッカーを楽しむ”ということに「ゲームに勝つ」という目標は最初から含まれているのだと思うようになりました。

2つ目は、「なぜなら」を会話する習慣が、サッカーというゲームを楽しむベース(基本)になっているということです。
選手たちも、スタッフ陣も、「なぜ、そのプレーが必要か?」「なぜ、失点したか?」「なぜ、得点できたか?」「何が良くて、何が良くなくて、なぜ、そうなるのか?」を会話する習慣を持っていて、常に言葉で表現し続けています。そして、会話を重ねることで、サッカーとはどういうゲームかを知り、同時に、お互いを知っていくことに繋がっていきました。
例えば、街のおじさんたちの遊びのサッカーに参加させてもらったときは、年齢、体力、能力といった要素よりも“サッカーというゲームの遊び方を知っている人たちだなぁ”と感じました。彼らは「ポジショニングの良さ(意図)」、「力の使いどころ、使い方」を知っていて、周りへの要求には「明確な理由」を持っていました。そのようなサッカーというゲームを楽しむベースがあった上で、プレーしながら、お互いの特徴や能力を感じとり、活かし活かされていく…それは、とても楽しいものでした。このように楽しむベースが養われていく背景には、日頃からの「なぜなら」を会話する習慣があるからなのではないかと思いました。

3つ目は、「自分にとっての”しあわせ”を知っている」ということです。私は、Real Sociedadの街、サンシェバスティアンでReal Sociedadのユニフォームを着た、たくさんの人の笑顔を見ました。
この街には、この街を愛する人たち、この街のクラブを愛する人たちがたくさんいました。彼らは、自信を持って、自分の愛するモノを世界一だ、最高だと思っています。少なくとも私は、彼らの発言やふるまいから、そう感じました。そうした環境で過ごすことで、自分にとっての「“しあわせ”ってこういうことだと思う」と感じる機会が増えました。また、彼らは街の美しさを誇らしそうに語り、そして私に街の素晴らしさを沢山伝えてくれました。初めは、自信満々に話をする周りの人たちに、「それは、もっといいものを知らない、知ろうとしないだけではないか?」と思いましたが、あるときそれは自分を幸せにするものではないと気づきました。今の自分から遠く離れたところにあるものではなく、現状に目を向け、そこで感じるものを味わいながら、自分にとっての“しあわせ”を大切にしていく。その上で、まだまだ知らない世界を知り、味わっていきたいと思うようになりました。
スペインという国で生活し、あらためて自分という個性や、自分にとっての“しあわせ”というものを自覚するようになりました。

今回はここまで。
まだまだ、書ききれなかったこともありますが、それらはまたの機会に言葉にさせてもらえたらと思います。

Agur‼(=アグール:バスク語での別れのあいさつ)

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